自死遺児の葛藤
その人は同僚から変わり者と思われていた。誰も話しかける人はいなかった。10歳くらい上の人であった。休暇をよく取っていた、理由は色々だった、同僚は嘘だろうと思っていた。その人はいつも手の指を隠すようにしていた。何の切っ掛けだったか、忘れたが一緒に食事をした。その人は何時も隠していた指を見せてくれた、中指が短かった。別段聞いたわけでもなかったのだが、何となく話してみたくなったのだろう父親が自殺してしまった事を話してくれた。中学生の時、庭に大きな木が一本あったそうだ、朝、目を覚ますと父親がいない、探しに行くと父親は木に紐をかけてぶら下がっていた。その光景が未だに目に焼きつき、頭から離れないといった。その人は話をしてホッとしたような爽やかな顔をした。聞くだけで何もいえなかった。その後はその人と急速に親しくなった。自死遺児は何時までも重荷を背負い生きていかなければならない。自分のせいで親は自殺してしまったのではないだろうか、と自問自答しながら生きていかなければならない。自殺する親も辛かろうが残された子も辛い。時代が変わり子供達がテレビに名前も顔も出して体験を語り「親のように、自殺に追い詰められる人を減らしたい、同じ体験をした子に一人じゃないよ」
と訴えていた。
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